Tales of

水鏡のアーカイブ

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書庫の地下には、紙ではなく水面に記録を映す部屋がある。司書見習いの少年は、毎朝そこへ降りて、前日に揺れた頁を静める役目を与えられていた。静まった水鏡には、失われた会話や忘れられた名前が、遅れて文字になる。

今日は一枚だけ、どうしても像の結ばない記録があった。手を伸ばせば触れられそうなほど近いのに、輪郭だけが薄く、声だけが鮮明だ。少年はそれを誤記として処理する代わりに、自分のノートへ写し取る。

鏡面に映るのは過去だけではなく、書き留めようとする今の迷いでもあるのだと、そのとき初めて彼は気づいた。

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