丘の上の書庫には窓が多すぎる、と誰もが言う。風が頁をめくってしまうからだ。けれど老司書は、その勝手に開く頁の中にだけ現れる文章があることを知っていて、窓を塞ごうとはしなかった。
見習いの少女は毎日、散らばった紙片を拾って棚へ戻す。その紙には書名も番号もなく、ただ短い一節だけが残されている。風がどこから運んできたのか分からないそれらを、彼女は「まだ本になっていない物語」と呼んでいた。
ある日、同じ一節が三度続けて落ちてくる。少女は初めて、それが偶然ではなく、誰かが続きを待っている合図なのだと思う。