頭文字D

下り坂の余熱

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走り終えたあとのブレーキは、しばらく熱を持ったまま黙っている。峠の途中に車を止めた青年は、ハンドルから手を離さず、冷えていく夜気だけを窓から吸い込んでいた。勝ったか負けたかより、今ここでエンジンを切ることの方が難しい夜だった。

助手席には、コンビニの袋と、開かれなかったメモ帳が置かれている。言葉にしてしまえば薄くなる感覚を、彼はいつも走り終えたあとでだけ持て余す。山の下では街灯が等間隔に並び、その規則正しさがかえって落ち着かなかった。

余熱の残る車内で、彼は次に走る理由ではなく、なぜ今夜ここへ来たのかをようやく考え始める。

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