Arknights:Endfield

Say you love me

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先ほどから微動だにしない竿先を眺めながら、アレッシュは退屈そうに大きなあくびをした。

隣の人物もつられかけたらしい。口元を手で押さえ、噛み殺すように小さく息を吐く姿が視界の端に入った。

鱗獣を見たいと言ってついてきた管理人のために、せっかくなら大物を釣り上げてやろうと気張ったものの、肝心の獲物はさっぱりかからない。

何度か小ぶりな鱗獣は釣れている。しかし、そのたびに管理人が見せた反応は、思っていたよりも薄かった。

薄々わかってはいた。

管理人の目的は鱗獣ではない。おそらく。

「……アレッシュ」

ようやく口を開いた管理人へ、アレッシュは視線だけを向けた。

「好きな人に、好きって言ってほしいと思うのは……ワガママなのかな?」

鱗獣の生態だとか、最近の任務の状況だとか、それなりにいくつかの話題を予想していた。

だが、聞こえてきた問いは、そのどれよりも斜め上をいくものだった。

危うく竿を川へ落としかけ、アレッシュは慌てて握り直した。

「何かと思えば……」

ため息交じりに答えると、管理人は申し訳なさそうに俯いた。

「こんなことを相談できるの、アレッシュくらいしかいなくて」
「そういうことは、本人に聞くのが一番なんじゃねえか?」

肩を竦めながら、至極当然の解決方法を口にする。

隣に座る人物が纏っているのは、いつもの「エンドフィールドを代表する管理人」としての空気ではなかった。

今ここにいるのは、ただ恋人との関係に悩む一人の青年だ。

そんな相手に、あまりにも身も蓋もない正論を返してしまったことへ、アレッシュはわずかな罪悪感を覚えた。

「悪かったって。んで? ウルフガードがどうしたんだ?」

管理人とウルフガードの関係は、周囲も知るところだった。

もちろん、任務や工業の運営に支障を来すようなことはない。傍から見るかぎり、二人は仲睦まじくやっているように見えていた。

それでも管理人がここまで思い詰めているのなら、それなりの理由があるのだろう。

アレッシュは川面に浮かぶルアーへ視線を戻し、管理人の言葉を待った。

「彼とそういう仲になって、まだ日は浅いけど……いつだって優しいし、僕のことを優先してくれる。何気ない行動から、ちゃんと愛されているのはわかってるんだ。でも……やっぱり、言葉でも聞きたいというか」
「あー……あいつ、言葉足らずなところがあるもんな」

一瞬、惚気話でも始まったのかと思った。

だが、管理人が悩んでいるのは、ウルフガードから愛されているかどうかではないらしい。

任務中でさえ彼の会話は端的で、必要な要点だけを伝える傾向がある。それがウルフガードのやり方なのだろうが、集団行動を好まない理由の一端でもあるのかもしれない。

もっとも、管理人と話しているときの彼は、普段に比べればずいぶん饒舌に見える。

敵地で得た情報はすぐに共有しているし、管理人の姿を見つければ、自分から呼び止めることも一度や二度ではない。

何より、管理人と話している間、機嫌を示すように揺れている太い尻尾を見れば一目瞭然だ。

それでも肝心の言葉が足りていないというのなら、気持ちが薄いのではなく、単に不器用さが勝っているのだろう。

アレッシュは少し考えるように宙を仰いだあと、再びルアーへ目を落とした。

「やっぱり、本人に直接言うのが一番早いんじゃねえか?」

     ◇

アレッシュの言葉が正しいことは、管理人にもわかっていた。

だが、本人に簡単に言えるのなら、そもそもこれほど悩んではいない。

帝江号の自室へ戻った管理人は、ため息を吐きながら、デスクに積まれた処理途中の書類へ視線を落とした。

今日は仕事にも身が入らず、予定していた事務処理の三分の一も終わっていない。

せめて散らかったデスクだけでも片付けようと、乱雑に置かれた報告書へ手を伸ばす。

しかし、紙を揃えている間も、思考はここにいない恋人のことで埋め尽くされていた。

彼が自分に特別な感情を抱いてくれていることは、重々承知している。

心だけでなく、互いの気持ちを確かめるように、何度か体を重ねたこともある。

それでも足りないと思ってしまう欲が、自分の中にあることに気づいてしまった。

恋をすると、こんなにも欲深くなるものなのだろうか。

自分の奥底に眠っていた際限のない飢えを、どう扱えばいいのかわからない。

「管理人」

突然名前を呼ばれ、管理人は弾かれたように部屋の入り口を見た。

そこには、今の今まで焦がれていた人物が立っていた。

「キャトロ」
「思ったより任務が早く終わった。だから、すぐに戻ってきたんだが……突然来て、迷惑だったか?」

デスクに散らばる書類に気づいたのだろう。

ウルフガードは管理人の様子を窺うように尋ねた。

管理人が勢いよく首を横に振ると、その表情がわずかに和らぐ。

しかし、こちらへ近づいてくるウルフガードと視線を合わせられず、管理人は片付けかけていた書類へ目を落とした。

「仕事中だったか? 邪魔になるなら、すぐに出ていく」

顔を上げない管理人を気遣ってか、ウルフガードは途中で足を止めた。

なるべく早く処理しなければならない書類ではある。

だが、久しぶりに二人で過ごせる時間を無駄にしたくもない。

それ以上に、この胸の奥にある気持ちを、本人へ吐露してしまっていいものか。

何かを言い淀んでいる管理人の様子を見て、ウルフガードは急かすことなく次の言葉を待っていた。

「キャトロ、お願いがあるんだ」
「なんだ?」

ウルフガードは小さく頷いた。

お願いがあると言ったものの、いざ口に出そうとすると、本当に伝えていいのか迷ってしまう。

面倒な人間だと思われないだろうか。

それでも、この気持ちを抱え続けている方が苦しかった。

管理人は意を決して、ウルフガードへ体ごと向き直った。

「その……もっと、言葉でも気持ちを伝えてほしいんだ」

ウルフガードの瞳が、わずかに見開かれた。

それから逸らされた視線に、管理人の胸はたちまち後悔でいっぱいになった。

やはり言わなければよかった。

普段からウルフガードは、あらゆる場面でこちらへの想いを示してくれている。

一緒に任務へ出れば、ほとんど護衛のように戦闘を援護してくれる。傷を負えば、すぐに手当てをしてくれる。

帝江号で雑務に追われていれば、何も言わずに手を貸してくれる。二人きりになれば、優しく丁寧に触れてくれる。

ただ最近、大好きなその声で「好きだ」と聞く機会が、少しだけ減ったように思えただけなのだ。

管理人は弁解するように、慌てて首を横へ振った。

「あ、その、君の気持ちを疑ってるわけじゃなくて。ただ最近、あまり好きって言われてなかったかもしれないって、少し思っただけで……」

後半になるにつれ、声はどんどん小さくなっていった。

顎に手を添え、顔を逸らして考え込んでいたウルフガードが、ようやく管理人へ視線を戻す。

「俺は、お前が寂しくなるほど言葉にしていなかったのか?」

問われた管理人は、大きく首を横に振った。

「寂しかっただけで、不安だったわけじゃないんだ。ちゃんと愛されてるってわかってる。でも、言葉で聞けたら、もっと嬉しいから……ワガママ、かな?」

今さら冗談だったとは言えず、恐る恐る尋ねる。

その答えが返ってくるよりも早く、管理人の体は逞しい腕の中へ閉じ込められた。

「キャトロ?」
「すまない。行動で示せば、それなりに伝わるものだと思っていた」

申し訳なさそうに声を落とすウルフガードに、管理人は再び首を横に振りながら顔を上げた。

「怒ってないの?」

一人でいることを好む彼は、同時に誰かから縛られることを嫌う。

今の頼みが面倒なものである自覚はあった。

長い両片想いを経て恋人になれたからといって、実際に付き合ってみたら想像と違った、と思われる可能性がないとは言い切れない。

だが、管理人を見下ろしたウルフガードは、不思議そうに何度か瞬きをした。

「むしろ、怒っているのはお前の方じゃないのか?」

管理人は困ったように笑い、ウルフガードの腰へ腕を回した。

「怒ってない。ただ……ほんの少し、寂しかっただけだ」

こうして素直に言えるのは、どんな気持ちでも全身で受け止めてくれるからだ。

我ながら現金だと思う。

それでも言葉にすれば、応えるように背中へ回された腕へ力が込められた。

ウルフガードは管理人を強く抱き締めると、その肩口へ顔を埋めた。

「好きだ、管理人」
「うん……僕も好きだよ、キャトロ」

顔を上げると、そっと唇が重なった。

最初は、何度も優しく触れるだけの口付けだった。

やがて唇をなぞっていた舌先が、内側へ入りたがるように柔らかく押し当てられる。

意図を察した管理人が唇を開くと、ウルフガードの舌が素直に入り込んできた。

舌が絡み合う感触が心地よくて、夢中になって口付けを繰り返す。

先ほどまで胸の奥を覆っていた靄まで、キスによって少しずつ解かれていくようだった。

ウルフガードの体重がゆるやかにかかり、管理人の腰が背後のデスクへ押し付けられる。

「っ、キャトロ……」

驚いてキスの合間に名前を呼ぶ。

唇が離れたことで、改めて互いの距離があまりにも近いことに気づいた。

吐息が触れ合うほどの距離から、橙色の光を含んだ緋色の瞳が、まっすぐに管理人を見つめている。

半顔を覆うリミッターなど意味を成さないのではないかと思えるほど、その視線は瞳の奥へ深く突き刺さった。

「好きだ、管理人」

近すぎる距離から囁かれた言葉に、胸が弾けるのではないかと思うほど心臓が高鳴った。

頬から耳元へ、何度も口付けが落とされる。

耳朶を甘く噛まれた直後、生温かな舌先が耳の輪郭をゆっくりとなぞった。

わざとなのだろう。

耳元で響く湿った音から逃げるように管理人は身を捩ったが、デスクとウルフガードの体に挟まれ、思うように動けない。

「管理人……好きだ」

耳元から直接流し込まれる低く心地よい声が、頭の芯まで染み渡り、全身へ駆け抜けた。

一気に体温が上がっていくのを感じ、管理人は思わず息を呑んだ。

「キャトロっ、もう、わかったから」
「いや。お前はまだ、わかってない」

耳元で囁き続ける恋人を落ち着かせようとしたものの、再び耳朶を噛まれ、管理人の腰が弓なりに反った。

自分の言葉へ素直に反応を示すことが嬉しいのか、ウルフガードは耳元で小さく笑い、管理人の髪を優しく撫でた。

「言葉で伝えてほしいと言ったのは、お前だろ」

低い声とともに、撫でていた手が髪から首筋へ、さらに体の線を辿って下りていく。

「言葉でも、行動でも、全部伝える。もう寂しいなんて思わないようにしてやる」

その言葉が終わるのとほとんど同時に、手はニットの裾へ辿り着いていた。

裾を捲り上げながら中へ入り込んだ手が胸元を探り、インナーの上から乳首を擦り上げる。

小さな突起を狙う刺激に、管理人の腰がびくりと震えた。

反応を確かめた指先は、さらに明確な力で同じ場所を弄る。

「んんっ……そこ、やだっ……」
「嫌がる声には聞こえない」

ウルフガードはインナーごと服を捲り上げ、露わになった胸へ唇を寄せた。

白い肌を何度も強く吸い、痕を刻み付ける。

薄い胸板の上で主張する突起を舐め上げると、管理人の体が敏感にしなった。

震える体を片腕で抱き留めながら、突起を口に含む。

舌先で転がし、ときおり歯を立てて甘く噛むたびに、押し殺しきれない声が管理人の唇から零れ落ちた。

伸ばされた手が、ウルフガードの髪を緩く撫でる。

少しだけ顔を上げると、源石リミッター越しにこちらを見つめる管理人の顔が視界へ入った。

上気した頬は、この先を期待しているように色づいている。

髪を撫でる指先はわずかに震えながら、それでも先を促すように動いていた。

これを無意識でしているのだとしたら、相当に質が悪い。

ウルフガードが視線を合わせたまま再び突起を舐めると、管理人は目の前の光景に甘い声を漏らし、肩を竦めた。

小さく身を震わせる姿は、怯えているというより、刺激に耐えきれず身を縮める小動物のようだった。

「……お前の体は、どこも甘いな」

囁きながら手を下腹部へ伸ばし、ズボン越しに管理人の中心を撫でる。

布越しでも、そこがすでに熱を持っていることは明らかだった。

だが、あえてそれ以上深くは触れず、手を離す。

焦らされた管理人は、視線を合わせたまま何かを訴えるように腰を揺らした。

ウルフガードは気づかないふりをして目を逸らし、薄く刻まれた腹筋へ口付けを落とす。

「っ……キャトロ」
「なんだ?」

顔を上げるのと同時に、ウルフガードは半身を起こした。

デスクへ体を預けたままの管理人を見下ろす。

管理人は何かを伝えようと口を開きかけては、羞恥に負けるように閉ざすことを繰り返していた。

「言わないとわからないぞ?」

その言葉に、管理人は恥ずかしさを押し殺すように一度唇を噛み締めた。

やがて、ゆっくりと源石リミッターを外しながら口を開く。

「っ……ちゃんと、触って」

灰色とも青色ともつかない不思議な色の瞳に見つめられ、ウルフガードは息を呑んだ。

縋るように潤んだ瞳は、抑えていた欲を煽り立てるには十分すぎるものだった。

懇願する唇へ噛み付くように口付けながら、ズボンと下着をまとめて引き下ろす。

すでに熱を擡げていた管理人のものへ触れれば、グローブ越しでもはっきりとわかるほど熱を帯びていた。

性急にならないよう丁寧に扱く。

指が上下するたび、自分よりも華奢な体は背筋をしならせ、逃げるとも誘うともつかない動きを見せた。

「っ、んんっ……キャ、トロっ」

口付けの合間に、掠れた吐息交じりの声で名前を呼ばれる。

その声が耳から全身へ染み込み、ウルフガードの唇からも熱い息が零れた。

「……可愛いな、管理人」

吐息が重なる距離で囁いた瞬間、管理人の体が明らかに大きく震えた。

直後、押さえ切れなくなった精が吐き出され、自らの腹部を白く汚していく。

予想よりも早い絶頂に、ウルフガードはわずかに目を見開いた。

「い、いきなりそういうことを言われたらっ……びっくりするじゃないか」

言い訳のように文句を口にしながら、管理人は両手で顔を覆った。

そんな姿に、堪えようのない愛しさが込み上げる。

ウルフガードは顔を隠す手へそっと唇を押し当てた。

指の隙間から、美しい瞳がこちらを覗いている。

「思ったことを言っただけだ」
「普段、そんなこと言わないじゃないか……」
「言葉で聞きたいんだろ?」
「っ……」

何も言い返せなくなった管理人に小さく笑い、指先へ何度も口付けを落とした。

「……続き、してもいいか?」

問いかけると、管理人は少し間を置いてから、小さく首を横へ振った。

拒まれたのかと思い、ウルフガードは面食らったように体を起こす。

だが、管理人の表情を見て、その意図を理解した。

ただ触れるだけでは足りない。

先ほど自分がしたように、何を望んでいるのか、きちんと言葉にしろということなのだろう。

ウルフガードは華奢な体を両腕で抱き締め、耳朶へ優しく口付けた。

「お前の中に入りたい」

曖昧に濁さず、耳元ではっきりと告げる。

「奥まで俺で満たして、お前を全部、愛したい」

満足のいく答えだったらしい。

管理人の腕が背中へ回され、返事をするように小さく頷いた。

ウルフガードが少しだけ距離を開ける。

「キャトロ……もう、入れて」

告げられた言葉に目を見張る。

管理人はデスクへ背中を預けたまま、足へ中途半端に絡んでいた衣類を蹴り落とした。

自ら足を開き、すでに解され、熱を持ってひくつく蕾を、見せつけるように指で広げる。

「君が来たときのためにと思って、準備してたんだ」

先ほどまでの羞恥に染まった姿は、いったい何だったのか。

あまりにも煽るような仕草に、初心なのか淫らなのかわからなくなる。

ただ、確実に欲を煽られていることだけは明白だった。

ウルフガードは片手で顔を覆い、深く息を吐いた。

「……そういうところだぞ」

すでにズボンを押し上げていた自身を取り出す。

熱を持った先端を蕾へ押し当てると、管理人の体が期待するようにわずかに震えた。

腰を押し進め、狭い入り口をゆっくりと押し広げていく。

半ばまで呑み込まれたところで、管理人の腕がウルフガードの背中へ強く回された。

拒絶ではないことを確かめてから、最後まで深く腰を進める。

一息に奥まで繋がった衝撃に、管理人の体がデスクの上を逃げるように揺れた。

ウルフガードはその腰を抱き留めると、繋がった場所が馴染むのを待ってから、深く腰を引いた。

再び奥まで突き上げれば、管理人の声が大きく跳ねる。

「あぁっ、キャトロっ! 激しっ……!」
「好きだ、管理人……っ」

管理人の下に敷かれた書類が、紙擦れの音を立てながら次々と折れ曲がっていく。

そんなことを気にする余裕は、どちらにも残されていなかった。

熱い内壁を何度も擦り上げながら、特に強く反応を示す場所を探る。

同じ場所を繰り返し突けば、管理人の中は応えるように強く収縮し、ウルフガードを締め付けた。

「管理人……好きだ。お前だけだ……っ」
「あっ、ぅっ、んっ……キャトロっ、キャトロ……好きっ、僕も、好きだよっ」

何度も言葉を重ねる。

深く繋がった体でも、互いの想いを確かめ合う。

やがて抑えきれないほどに高まった熱を、二人はほとんど同時に解き放った。

     ◇

先ほどから微動だにしない竿先を眺めながら、アレッシュは退屈そうに大きなあくびをした。

しかし、隣に座る管理人は川へ顔を向けたまま、何の反応も見せない。

重苦しいわけではない。

かといって、気楽でもない。

何とも言えない微妙な沈黙を破ったのは、やはり管理人だった。

「アレッシュ」

呼ばれたアレッシュは、竿先から隣の人物へ視線だけを移した。

「やっぱりウルフガードには、今までどおりでいてもらった方がいいかもしれない」
「今までどおり?」

つい先日まで、もっと言葉で伝えてほしいだの何だのと悩んでいたはずではないか。

何があったのか、できれば詳しくは聞きたくない。

そう思っていたにもかかわらず、反射的に聞き返してしまったことを後悔しながら、アレッシュは竿へ視線を戻した。

「そう……キャトロが饒舌になりすぎると、僕の心臓がもたないってわかった」

詳しい話など聞かずとも、その一言ですべてを察してしまった。

アレッシュは自らの勘の良さを呪いながら、危うく放しそうになった竿を強く握り締める。

水面に浮いていたルアーが大きく跳ね、その反動で、周囲へ集まり始めていた鱗獣の影が一斉に散っていった。

「……惚気話は鱗獣も食わねえ、ってことわざがあってだな」
「どういう意味?」
「甘すぎて、餌にもならねえってことさ」

そう言うと、アレッシュは一度ルアーを引き上げ、再び川へ放り込んだ。

ようやく戻り始めていた鱗獣の影が、着水音に驚き、また四方へ散っていった。

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